先生はあちこちの展覧会や個展を楽しみに出かけておりました。知り合いの個展会場でのことです。
個展を開催している方は、安江先生が来てくれたことがうれしくて、安江先生と一緒に記念撮影をお願いしました。
個展の主と、先生が並んで、「さー撮りますよ!」とカメラを向けました。すると先生は、すっと、ヨコを向いてしまわれることがありました。
(この話は加納房雄さんの話を元にしています。)
先生は描こうと思った場所へは、何度も何度も足を運びスケッチをされていた。そして、キャンパスに向かって描き始めると、描きためた現場のスケッチは一度も見ないで一気に描き上げた。それはまるで、心にたまったものをはき出すようだった。
(この話は森薫さんの話を元にしています。)
1999年9月20日、ボクはたまたま、先生の入所している、特養「瀬戸の里」を訪ねていました。本当に偶然ですが、安江先生が旅立つ場に立ち会うことができました。先生はゼーゼーと荒い息をしていました。
安江先生はしばらくして静かに旅立ちました。その姿は、感性豊かな青年のままでした。すぐに加納さんに連絡を入れました。加納さんは、安江先生をとても慕っていたので、訃報を聞いたときは「エッ…!」と言ったきり無言でした。大急ぎでやってききましたが、何も言わず無言で先生の枕元に立ち続けました。
加納さんは、先生をあちこちへ連れ出すため、自分のバンを改良して、車椅子も乗せられるようにしていました。先生はいつも楽しみに加納さんとドライブを楽しんでいました。